溺愛MOON
はぁはぁと息を整えるのに精一杯で声はかけられなかった。

部屋に私の呼吸音だけが響いて、やけに耳につく。


かぐやが座ったままゆっくりと振り返る。


「おかえり」


いつものかぐやだった。


でも、もう何も知らないフリはできない。

平気なフリも……。


ボタボタと大粒の涙を零し、かぐやに抱きついた。


「香月、泣いてるの……?」


かぐやの言葉に私はぎゅっと首を絞める勢いで抱きしめる腕の力を強めた。


泣いてる? って……。


どう見ても泣いてるじゃん……。
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