溺愛MOON
「俺は香月を幸せにしてあげられるようなもの、何も持ってない」

「そんな……、そんなの私だって……」


私は何も持っていない。


誇れるような仕事も。

恋人も戻れる場所も。


そう言ってたのはいつだっけ。


「香月には香月の居場所があるだろ?」

「……」

「この島が好きなんだろ?」


私は息を呑んだ。


「島の人たちを置いていけないだろ?」

「……待って、待って、かぐや。それは今、高橋さんとかがこんな状態だから」

「俺と一緒に来ても香月は笑顔にならない」

「……」

「香月は気づいてないかもしれないけど、最近よく笑うようになった。初めて会った時よりずっと」

「……っ、それはかぐやがいてくれるから」

「それだけじゃないって自分でも気づいてるんだろ」
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