溺愛MOON
「今の俺じゃ、香月を幸せにできない。だから島を出る」


私だって、かぐやがいつまでもこのままいられると思ってたわけじゃない、けど……。


「今の俺は島でずっと生きて行くことはできない」

「今の俺って……?」

「この島に、閉じ込められてる俺」

「……意味分かんないよ」


かぐやの胸に顔をうずめてるから、かぐやの表情が見えない。

かぐやの本心も、私には見えない。


「もう何もかもどうでもよくなってた。なのに逃げられないように、どこかでゆっくり休めって放り込まれるようにこの島連れてこられた」

「……」


かぐやが初めて話す、かぐや自身の話に私は黙って耳を澄ませた。


「最初、香月に出会ったときも、勝手に俺のこといい風に想像して、はしゃいでるの分かってたけど、それもどうでもよかった」


かぐやの目に映ってたイタイ私の話を聞くことに、ショックがなかったと言ったら嘘になる。

だけど今はその先を聞きたい気持ちの方が強くて。
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