溺愛MOON
こんなに悲しいのに。

こんなに一緒にいたいって思ってるのに。


私は色んなものを捨てられない。


島の人達も。

田舎の両親も。


遣り甲斐を感じ始めた仕事も。


それらとかぐやを天秤にかけることが、できない。


「俺もそんな状態で香月連れて行きたくない」


そう言ったのはあくまでかぐやの優しさだったのかもしれない。


かぐやを捨てるのは私。


その予言を現実のものにしない為のかぐやの嘘かもしれない。


それが分かっても、何もかも捨てる……、と言えない私は、冒険できない臆病者の悲しい「大人」だった。
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