溺愛MOON
人魚の国の王子さま。

あのプランクトン達は彼を人間界へと送ってきた海の使いかもしれない。


私は目を閉じて海の底の世界を思い浮かべた。


あぁ、素敵。

私も連れて行ってくれないかなぁ。










その日の午後の船便にはいつもと違う客がいた。


私より少し年上っぽい20代後半と思しき女性と、同じくスーツを来た若い男の人。

スーツを来た乗船客なんて滅多にいないから、私の目は釘付けになった。

ゆるやかなパーマの髪をひとつにまとめて、きりっとしたメイクをほどこして。

いかにも仕事デキますってオーラが出ている女の人。


カッコいいなぁ。


張り切って観光パンフレットを手渡そうとする私を、チラリと一瞥すると女性は思いっきり私を無視して目の前を通り過ぎた。
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