溺愛MOON
それでもここだって思ってしまったのは、東京という人混みの中の孤独に、耐えられなくなったからかもしれない。

前向きな気持ちじゃない。


ただ、どこかに逃げたかっただけ。


ポンポンポンと船のエンジン音が緩やかになって、島に到着したことに気がついた私はボストンバックを持って立ち上がった。









「このパンフレットに載ってるのが島の観光スポットだから。一通り覚えて島に来たお客さんに説明してね」


船着場のすぐ傍にある観光案内所……という名のプレハブ小屋。

ここが私のオフィスだ。



「午前中は島の散歩しながら場所でも覚えて」

「……はい」


島の散歩が私の初仕事……、らしい。

……ユルすぎる。
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