溺愛MOON
もう少しすれば海辺は海水浴客でいっぱいになるんだそうだ。

そうなると人魚はもう姿を現さないかもしれない。


今日会えますように。

私は一番星に祈りを捧げた。


そうして待つこと2時間。

いい加減に退屈になってきた私は、やっぱりビールを持ってくればよかったと後悔した。

もうすっかり陽は落ちて、でも今日は満月だから、月明かりがいつもよりも明るく波間を照らしていた。


どんなに波間に目を凝らしても夜光虫は現れなかった。

夜光虫が光らないと人魚は現れないのに――。


世の中は私に都合良くは動かない。

そんな現実を改めて見せつけられた気がして。


がっかりを通り越して悲しくなってくる。
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