溺愛MOON
私は砂を払って立ち上がり、遊泳禁止区域の岩場の方へと歩いて行った。

諦めきれない私はここからは死角になっている方向を見に行くことにした。


今夜は月明かりが明るいから不思議と寂しくはない。

落ち着く気持ちになったり、寂しい気持ちになったり、海は毎日違う表情を見せてくれる。

今日は穏やかな海だ。


波打ち際ギリギリの岩場まで歩いて行って、私は岩によじ登ることにした。


実は岩と岩の間にはフナムシと呼ばれる多足生物、つまり気持ちの悪い虫がいることが多いので、私は岩場には近づかないようにしている。

でも今日は少しでも見晴らしのいいところに登りたかった。


こんなに月が綺麗なのに。

こんなに私は待っているのに。


今日会えないなんて勿体なさ過ぎる。
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