溺愛MOON
月明かりを頼りにフナムシがいないことを確認してから岩を掴む。

岩登りなんて、子どもの時以来……、いや子どもの時だってやった覚えなんてない。


アドベンチャー。

怖いよりも少しのワクワクが勝ってきた。


私もあの海賊アニメの一味に入りたいって思ってたんだよね。


私は冒険家の気持ちになりきって、見上げるほどの場所にあった岩の上に手をついて勢い良く身体を持ち上げた。


「あっ」


思わず小さい声が上がった。


人魚はそこにいた。


彼は海ではなく陸の上にいた。

普通に。


岩場の上に座って、夜空を見上げていた。

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