溺愛MOON
私の声に反応してチラリとこちらに顔を向ける。

彼と視線が合った気がした。


気がしたっていうのは彼の目にかかるほどの長い前髪が邪魔してはっきりと瞳が見えない。

ぼさぼさの黒髪にくたっとしたTシャツとジーンズで足を投げ出すように座っている彼は、やっぱり年齢不詳だった。

もしかしたら高校生くらいにも見えるし、私とそう変わらないようにも見える。


何ていうか……、あどけない顔立ちをしている。


でもこの前と違って彼の髪も服も乾いていた。

そして月明かりに照らされた彼の肌はやはり白く、ドキドキする程綺麗だった。


彼は前と同じく、私なんかに興味はないというようにフイッと顔を逸らすとまた空を見上げた。


「……あなた人魚姫なの?」


早く話しかけなければ、彼が消えてしまうような気がして私は急いで口を開いた。
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