溺愛MOON
受け入れてくれた、その事実が嬉しくて、私はいそいそと彼の隣に腰を下ろした。

そんな私を、追い払うでもなく、歓迎するでもなく、彼はただその場所にじっと座って私の行動を目で追っていた。


「名前は何て言うの?」

「……」

「私は吉井香月。あなたは?」

「月……?」


あ、反応した。

私の名前に、反応してくれた。


「そう、香る月でかづきって読むの」

「ふぅん」

「あなたの名前は?」

「……」


近づけたと感じたのは一瞬のことで、どうやら彼は私に心を開く気はないらしい。
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