溺愛MOON
隠されると余計に知りたくなる。

私は夢中で彼にしゃべりかけた。


「ここで何してるの?」

「……何もしてない」

「嘘。さっきから月ばっか見てるでしょう?」

「そのうち迎えが来る」

「月から!? 月から迎えが来るのね!? もしかしてかぐや姫!?」


私が興奮気味に話に食いつくと彼はフッと笑った。

笑うとやっぱりあどけなくて、可愛い、と思ってしまった。


「おもしろいね、アンタ。友達ん中で浮いてるだろ」


けれどその後に皮肉げに吐いた言葉は何とも現実的で――、私は彼にからかわれていたんだと気づいた。

そしてその内容はずばり図星で、私はグサリと心に傷を負って俯いてしまった。
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