溺愛MOON
不思議なオーラを纏って、素敵な返しをしてくれる彼も、やっぱりただの現実の男の人らしい。

私はただのイタイ子らしい。


やっぱり現実はどこまでも厳しくて――、夢見ることなんて許してはくれない。


この現実離れした離島での出会いも、種を明かせばきっと何てことない普通の出会いで。

私はこんなところまで彼を探しにきた先程の自分をひどく哀れに思った。


いっそあのまま会わなければ良かったとさえ思い始めていた。


「……あんたは何してるわけ? こんなところで」


私が拗ねて体育座りで俯いていると、彼の方から話しかけてきた。


まさかあなたを探してたんですよ、とは言えない。

人魚姫じゃなかったし。


「私もお迎えを待ってるの」

「……」

「いつか王子様が私を迎えに来てくれるの」

「……」
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