溺愛MOON
「今度エサやってみれば」

「えぇ!? 嫌だよ! ネズミに見初められちゃうよ」


やっぱり彼はうんと年下かもしれない。

近くで見るとその前髪の下の瞳は予想外に大きく黒目がちでキラキラしていた。


そしてやっぱり人間だった。


手を伸ばせばそこに実在する。

私は彼に触れたくて伸ばしそうになる腕を、意志の力で懸命に押し留めていた。


彼に嫌われたくない。

触れたら逃げる野良犬のように、下手に手を出したらもう会えなくなる気がしてた。


かぐやにまた会いたい。


彼の言うことが本当ならば、本当に軟禁されているならば、また会える。

名残惜しいけれど、彼にオヤスミと言った。


黙って手を振る彼はまだまだこの岩の上でお月見を続けるつもりらしかった。

そして私は眠気でフラフラしながら長屋に戻ると、布団に倒れこむようにして眠った。
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