溺愛MOON
仕事が休みの日になると私の退屈さは倍増する。

買い物ひとつでも船に乗らないと行けなくてよっぽどの用がないと重い腰が上がらない。


退屈しのぎといえば、友達と長電話をすることぐらいで、私は前の会社で同僚だった親友の美貴に延々とかぐやとの出会いを話してきかせた。

美貴からは合コンに言ってもいい男が見つからないから、婚活パーティーに参加したという話を聞かされて、なんだかそんな生活を懐かしく思った。


数週間前までは自分もその中にいたのに。

今じゃ、私は隠居した仙人のようだ。


その暮らしを嘆いていた自分も確かに存在するのに。

今はかぐやと過したあの穏やかな時間にもう一度浸りたいと願うばかりだった。


だから私はまだ陽が高いのに海へ行った。

かぐやに会えるって期待したわけじゃない。

ただの散歩だ。


けれど浜辺に下りてすぐに私はかぐやの存在に気づいた。
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