溺愛MOON
「私もやりたい!」

「……やれば」

「一緒にやる! 10分待ってて!」


私はかぐやに言い捨てると返事も待たずに砂浜を駆け上がった。

そのまま長屋へと走り、鍵を開けるのももどかしくサンダルを放るように脱ぐ。


キッチンの隅に置いてある四角い不燃ゴミの箱を漁って――、


「……あった!」


この間、空けたイチゴ酒の空瓶。

ソーダで割って一人カクテルバーを楽しんだ代物。


急ぎながらも丁寧にラベルを剥がす。

そのまま瓶を引っ掴んで部屋に置いてあるカバンから、システム手帳を取り出した。


手紙を書く習慣なんかないから、便せんなんて持ってないし。

今はカタチよりも参加することに意義があるように感じた。


かぐやの見ている景色が見たい。
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