溺愛MOON
見ず知らずなのに、気さくに声をかけてくるおじさんも、

わけ分からない魚の干物を持っていけ、と押し付けてくるお婆さんも、


やたら親切な島の住民みんなが、

私の気持ちを重くさせていた。



それは自分のせいだって分かってる。

私はまだどこかでこの現状を受け入れ切れていない。


こんなところで何やってるのって、

そう思っている自分がいる。


もう少しまともなオフィスだと思っていたとか。

他に社員なんていないじゃんとか。


勝手に思い描いていた職場とかけ離れていることに失望している自分がいる。


それは島の人のせいじゃないし、失礼だって分かっているのに、私にはこの沈む気持ちをどうしようもなかった。
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