溺愛MOON
私は手帳からメモ用紙を一枚破りそのまま手帳を下敷きに文字をなぐり書いた。


早く、早く――。


メモ用紙をくるくる丸めて瓶に突っ込む。

コルクの栓なんてないから元からの蓋をきっちり閉める。


これでおそらく水は入って来ないと思う。


メッセージボトルなんて信じてない。

この手紙を受け取るのが誰でもいい。


私にとって重要なのはかぐやと一緒に流すという儀式。


私は長屋を出ると、また砂浜へと走り出した。

私のメッセージボトルを持って。


気持ちが前へ前へと出すぎて、何度も砂に足を取られて転びそうになった。

かぐやはこちらを振り向くこともなく、ただ海を見つめて経っていた。


その後ろ姿が今にも消えてしまうんじゃないかと、私は必死で目を凝らして彼の後ろ姿を捉えていた。
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