溺愛MOON
私はいつ、かぐやの頭が波間に消えやしないかとハラハラしながら見守った。


かぐやはそのまま5分くらい波間に漂うように泳いでいて――、戻ってきたときには手ぶらだった。

わざわざ足のつかないところまで泳いで、瓶を浮かべてきたらしい。


「私の瓶も流してくれた!?」

「……あぁ」

「かぐやのと一緒に!?」

「……一緒に流したってすぐにバラバラになると思うけど」


かぐやはポタポタと滴を垂らしながら私の目の前まで歩いてきて、天を仰ぐとブルブルッと頭を振って水を飛ばした。


「わ、ちょっと」


かぐやの髪の毛から水滴がいっぱい私の顔へと飛び散って、私は手でガードしながら一歩退いた。

それを見てフッと笑うかぐやに、わざとやってるんだって気づいた。


かぐやが私のと一緒に瓶を流してくれたから、私に笑いかけてくれるから。

嬉しくて満面の笑みを浮かべて文句を言うと、かぐやは眩しそうに少し目を細めた。
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