溺愛MOON
「どこまでついてくる気?」


かぐやは迷惑そうに言いながらずぶぬれのTシャツを頭から引き抜いた。

華奢な身体は意外にも程よく筋肉がついていて、すっきりとした均整のとれた白い上半身が露になった。


私がかぐやの上半身に見惚れていると、かぐやは乱れた髪を鬱陶しそうにかき上げ、

「シャワー浴びたいんだけど」

と私を睨むように言った。


気がつけばそこは洗面所で、私は悶々と考え事をしながらここまでついて来ちゃってたらしい。

慌てて「ごめんなさいっ」と言うと洗面所からキッチンへと飛び出した。


このオンボロ長屋にはお風呂はないけれど、シャワーだけは着いてるのだ。


シャワー室からは水音が響き始め、私は勝手に中の部屋でかぐやを待つことにした。


ドキドキしながら畳の部屋へ入る。

そこにはかぐやの生活を表すものは何もなかった。
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