溺愛MOON
少しのガッカリと安心を同時に得る。

かぐやの正体を知りたいと思う気持ちと、かぐやには不思議な存在のままでいて欲しいと願う矛盾した気持ち。


テレビも何もない無機質な畳の空間に、どこかから貰ってきたと思われる古びたちゃぶ台が馴染んでる。

ただその上に置かれた黒いノートパソコンだけが異彩を放っていた。


別におかしくはない。

私はパソコンを持っていないけれど、テレビの代わりにネットをする人だって多いって言うし、手紙よりもメールの方が便利な時代だ。

だけどメッセージボトルを海に流すようなかぐやだからこそ、文明の利器を使ってるところが想像できなかった。


私の部屋と違って飲みかけのお茶も置いてなければ、雑誌のひとつも出ていない、生活感のない部屋。

本当に住んでるの? とこの期に及んで疑いたくなるような。


私はちゃぶ台の前に座って部屋を見回してみた。

パソコンにはかぐやの正体が隠されていそうだけれど、さすがに勝手に開くわけにはいかない。
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