溺愛MOON
島には海上釣堀と海水浴場、展望台、由緒正しいらしい神社、それが観光スポットの全てだった。


観光案内なんていらないじゃん……。


私は溜息を吐きながらまだ経営されていない海の家の横を通り過ぎた。

島唯一の海水浴場は離島だけあって、透明度は抜群、泳いでいる魚が見えるくらい綺麗だった。


つい、近づいてそれに見とれてしまった。


自由に泳げるお魚さんはいいよねー。

私もどこかへ泳いで行っちゃいたいよ。


この島に逃げてきたばかりの私が、もう別の場所に逃げ出したくなってる。

どうしようもない。


この海水浴場を通り過ぎるとすぐに四軒続きの古ぼけた木造の長屋がある。

ここが私の住居だ。


あまりに古ぼけた造りのせいか、

それともこの島でひとり暮らししようとする人間がいないのか、


私の周りは全部空き部屋だ。
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