溺愛MOON
私は得意の空想に浸って、かぐやの正体を考え始めていた。


かぐやは何かから隠れてるんだろうか。

闇の組織に追われちゃってるんだろうか。


ネズミの正体……、かぐやだったんだ。

あんなに知りたかったかぐやの居場所がまさか隣の部屋だったとは。

まさに『灯台元暗し』だ。


「まさかほんとにネズミが王子様に化けたんじゃ……」

「俺はネズミじゃない」


背後から嫌そうな声が響いて私はビクッとして振り返った。

かぐやは先程と同じく上半身は裸で首にタオルをかけていた。

下は迷彩柄のハーフパンツを履いている。


濡れた髪はかき上げられて緩くオールバックに流れてる。

意外にキリッとした眉毛と大きな目がむき出しになっていて、まるで別人のような印象だった。


こうして見るとほんとに普通の男の人だった。

何ならちょっと格好良い方の部類だ。

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