溺愛MOON
「何?」


かぐやは私に顔を凝視されて居心地悪そうな顔をした。


「ううん、何でもない」


見惚れていただなんてさすがに言えない私はかぐやからちゃぶ台へと視線を落とした。


かぐやはそのまま私の前を通り過ぎて窓をカラカラと開けた。

涼やかな風が部屋の中へ舞い込んで来る。


「何もないね。この部屋」

「……水ならあるけど」

「いや、そういう意味じゃなくて。かぐやは部屋にいるときは何してるのかなーって思って」


「寝てる」


そう言うとかぐやは欠伸をひとつして開いた窓の真ん前でゴロリと横になってしまった。

私に背中を向けて頭に肘をついているかぐやを見ながら、彼が夜ちっとも眠そうじゃない訳が分かった気がした。


かぐやは夜行性らしい。


それにしても一応お客さんという名の私がいるんだから寝ないで欲しいんだけど……。
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