溺愛MOON
「かぐや?」

「……」

「髪の毛ちゃんと乾かさないと風邪ひくよ?」

「……乾かして」

「……」


かぐやは深窓のお坊ちゃまなんだろうか。

他人にお世話されるのが当たり前の生活をしてきたんだろうか。


そんなことを考えながら、私は座ったままズリズリとかぐやの傍まで移動して首のタオルを外して髪の毛を拭き始めた。


タオル越しに指にかぐやの体温が伝わってくる。

かぐやに初めて触れた。


ドキドキと速くなる鼓動を感じる。

かぐやはやっぱり血の通った人間だった。


そんなちょっとした感動を味わいながら丁寧にかぐやの頭をマッサージするようにタオルでこすった。

指先から伝わる体温に、今までのわくわくするような胸の高鳴りから、普通の男の人に触れているというドキドキへと心情が変化するのが分かった。
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