溺愛MOON
不意にかぐやの空いた左手が私の手首を掴む。

かぐやの体温は私よりも高く、掴まれたところから熱が伝わってきた。


「アンタさー……」

「……何?」

「俺とこんなことしてて危ない、とか思わないの?」

「へ?」


私がとぼけた声を出すとかぐやの声に苛立ちが含まれるのが分かった。


「だからさ、何知らない男の部屋にノコノコ上がり込んでんのって聞いてんの」

「あ……」


かぐやの言いたいことがようやく理解できた。

真黒で大きな瞳がじっとこちらを見つめていて、私は責められているような気持ちがして思わず視線を逸らした。

「それは……」

「それは?」

「相手がかぐやだから……」


この世の存在じゃ、ない気がしてたから。
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