溺愛MOON
その言い訳もかぐやの目を見て言うことはできなかった。

それは半分本当で、半分嘘だから。


私だって普段なら何も知らない男の人の部屋に上がり込んだりしない。

けれどかぐやは特別というか、男の人という枠組みでは括れないというか、むしろ人間だってさっき実感したばかりというか……。


だけどさっきかぐやに触れた私は明らかにかぐやを男の人と認識していて。

その上でドキドキしていたのも事実。

そんな自分は軽い女だと蔑まれても仕方がない気がした。


私が色々考えていると、かぐやは無視されたと思ったのか掴んだ私の手を勢い良く引き寄せ、私をその場に押し倒した。

かぐやの背後に見えるのは古ぼけた木の天井。


「かぐや……、何……?」


口に出した言葉は自分でも驚く程に弱々しく、私は自分で思ってるよりこの状況に混乱しているらしかった。
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