溺愛MOON
目の前というか自分の顔のすぐ上にかぐやの顔がある。


「……こういうことされたいと思ってた?」


その表情は、私をからかっているような感じじゃなく、むしろ暗いものだった。

他者を拒絶するような、かぐやが初めて見せる、闇。


私はただそれに圧倒されて、かぐやの質問に答えるのが遅れた。

彼はそれを肯定と受け取ったのか、ゆっくりと顔を近づけて私の首筋に唇を当てた。


感じる熱い体温と柔らかい唇。敏感な首筋はびりっと電気が走るように私を覚醒させた。


「……っ、待って!」


目が覚めたみたいに自分の置かれてる状況が、現実のものとして認識された。


男の人に組み敷かれている。

急に不安になって逃げ出したい衝動に駆られた。
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