溺愛MOON
そのまま見つめ合うこと数秒。


「かぐや……。何……?」


何で急にこんなことするの?

私のこと突き放そうとしてる?


探るように目の前にある漆黒の瞳を見つめる。

するとその瞳はゆっくりとまた近づいてくる。


――キスされるのかと思った。


そう思っているのに逃げることも、目を閉じることもせずに吸い込まれるように見ていると、コツンとお互いの額が当たった。

かぐやは私と額を合わせただけだった。


近すぎて視界がぼやける。

だけどかぐやの吐息を唇に感じる。


それだけでクラクラしそうだった。


「……俺とこういうこと、したいの?」


したいと言っても、したくないと言ってもかぐやに嫌われそうな気がした。

頭が空っぽになったかのように、考えることを拒否するから、私は心のままに正直に答えるしかできない。


「分からない……」
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