溺愛MOON
自覚する心
7月になると海開きが行われ、浜辺にはたくさんの海水浴客がやって来た。

海は私とかぐやのものじゃなくなってしまった。


けれど、私とかぐやはいつでも会える。

かぐやの家にはいつも鍵がかかっていたけれど、窓は開いているのでいつでもかぐやに会うことができた。


私の部屋の窓もいつも開いている。

長屋にはクーラーがついていなかった。


「……暑いんだけど」

「じゃあ、海行く? 海水浴」

「……人がいっぱいいるから嫌だ」


畳の上に伸びているかぐやを見ながら、私は調達してきたカキ氷の機械をちゃぶ台の上にゴトリと置いた。


「……何?」

「ジャーン、カキ氷マシーン! 職場のおっさんにもらっちゃった。シロップもあるよ。食べるでしょ?」

「香月さぁ……」

「何?」

「段々、島に馴染んできたよな」


何気ないかぐやの言葉にドキリとする。
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