溺愛MOON
あのままかぐやに抱かれていたら、きっと今こうして一緒にいることはできなかった気がする。

かぐやは私を試した……、きっと。


かぐやに何があったのか知らない。

けれど人を信じられないのなら、私がずっと傍に居ることで、かぐやの凍った心を溶かせないかなぁと思う。


でもそれと同時にいつも付きまとうのは不安。


最後に残されるのは……、きっと私。


助けてほしいのは私の方だ。

部屋でばかり会っているせいか、かぐやはもう私の中で完全に一人の男の人だった。


月が綺麗な夜は、私達は決まって海へ出た。

かぐやがのらりくらり歩く後ろを私は黙って着いて行く。


ぶらり垂らされた手を後ろから握ると、かぐやは力を抜いたまま特に抵抗を見せなかった。

だからその日から手を繋ぐようになった。


海には同じように散歩をしている観光客カップルがちらほらいた。

私達が登っている岩場の下で、カップルがキスしてたこともある。


こっそり上から覗いちゃったりする私に、かぐやは呆れた視線を向けていた。
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