溺愛MOON
他人のラブシーンなんて見たくないけど見たい。

ドキドキする。


私が岩に寝そべるように上半身を倒して岩端に乗り出していると、かぐやが腕を引っ張って邪魔してくる。

下にいるカップルに気付かれたくないから抵抗せずに腕を引かれるまましぶしぶ身体を起こす。


さらに引かれるままにかぐやの方へ上半身を倒すと、かぐやが顔を近づけてきた。


「俺らもする?」

「……え?」


小声で囁く声がやけに色っぽくて、私の心臓はドキンと跳ねた。


「キス、俺らもする?」


かぐやが笑いを含んだ声で甘い誘惑を囁く。

目を丸くしてかぐやを見つめると、顔が近付いてきた。


その瞳に以前の暗い影が見えないことに安心して、私はそっと目を閉じた。


触れた唇はとても柔らかくて、私はかぐやが泳いでた海を思い出した。
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