溺愛MOON
ちゅ、ちゅ、と優しく触れるだけのキスを繰り返すかぐやに、私の思考は蕩けそうになる。


「発情しちゃった?」


かぐやが耳元で囁く。

吐息がくすぐったい。

胸がきゅって締め付けられる。


「かぐやでしょ」


悔しいから赤くなった顔を隠すように肩口に顔を埋めた。


かぐやは私を拒絶しない。

傍にいてその温もりを伝えてくれる。


こうして同じ時を過ごして……、近づけばキスをくれる。


だけどこんな風に私をその気にさせておいて、発情したように見せかけておいて、それでもかぐやがその先を求めることはなかった。


だからくすぐったくて甘酸っぱいときめきに胸を躍らせながらも、いつも真っ暗な海に吸い込まれそうな不安が同時につきまとった。


甘さも心もとなさも、不安も。

全部が、私がかぐやに溺れる要因となった。
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