溺愛MOON
かぐやは私の言葉をどう受け取ったのだろう。

私の両肩をそっと押して畳の上へと寝かせた。


ゆっくりとかぐやの体重が上に圧し掛かってくる。

私は黙ってかぐやの背中に手を回した。


私の心の奥底の叫びは、単なる一夜の誘い文句と取られたのか。

それとも何も言わないのがかぐやなりの誠意なのか。


もうどっちでもいいやと思った。


そのまま真っ暗な部屋でかぐやに抱かれた。

私が抱かれたかったから。


どんなに身体を近づけても、繋げても、心は抱きしめるこの腕をすり抜ける。

そんな気がして、怖い。


かぐやと過ごす幸せな時間は、暗闇の上で細いロープを渡る綱渡りと一緒。

少しでもバランスを崩せばあっという間に落ちてしまう。


途中で泣いてしまったけれど、それを悟られないように、一生懸命息を殺した。

暗闇の中で感じるのはお互いの体温と呼吸だけ。


それだけが私の世界のリアル。
< 86 / 147 >

この作品をシェア

pagetop