溺愛MOON
私も片付けを手伝いたいくらいだけれど、夏休みに入って以来、島の観光客はピークに達していて観光案内所を留守にするわけにはいかなかった。


「泳ぎに来たんだけど泳げますかねぇ?」

「海の家は開いてますよ。波ももう穏やかですし。ただちょっと濁っちゃってるのと木屑が海面に浮いてるんで水質は良くないですね。ごめんなさい」


海水浴を楽しみにやってきたらしいファミリーに、私は申し訳なく思いつつも、見てきたままの状況を説明する。


「じゃあ、釣りにする?」

「海の幸はちゃんと食べれるんだよね?」


めげずに旅行を楽しいものにしようとする若い両親に無邪気にはしゃぐ小学校低学年くらいの男の子。

私はホッとして笑顔で頷いた。


泳げなくても釣りはできるし、漁船が出てるから海の幸も食べられる。

夕日の綺麗に見える展望台もあるし、海を見ながら島を散歩するだけでもいい。


楽しむ方法はある。

この島で良い思い出を残して欲しい。


私は民宿の迎えの車に乗って行く人々を見送りながら、やっぱり私も仕事が終わったら片付けに参加しようと思い始めていた。
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