ねぇ、すき。
ねぇ、すき。
――気づけば、もう遅い。
だって、手遅れだもん。
「―――それでも、すきだったのっ……!」
暗い闇を映した海は月明かりだけを灯している。
流れ落ちる小さな雫はゆっくり、と頬を伝う。
後ろでは楽しそうに花火を散らしていて、――やろうよ。と楽しげに手を引く。
手に持っていた携帯を見せて笑う。
「……おかーさんから電話きてた、」
むぅ、と不機嫌さを軽く表せば頑張れ。と言って先に走っていく。
柔らかな砂浜をゆっくりゆっくり歩く。
一瞬止まった涙はまたゆっくりと溢れだして。止まらない。
石段に腰掛けて、機械音を耳に当てて聴く。
『………もしもし?』
温かな安心できる声を聴いて嗚咽を漏らす。
『!?……どしたん!?』
嗚咽と涙が邪魔して心配してくれる彼女にすら何も言えない。
「………っ、つき、あってたん、だっ、て。」
―――あの子と、彼。
彼女はゆっくりと、
――どうしたん、話せる?
電話越しに聞こえる彼女の声すら遠く感じた。