放課後センチメンタル
《1》転校生は美少女
彼女の第一印象はとにかく綺麗。
…“綺麗”だなんて、普段なら絶対に言わない言葉を使ってしまうほどには、彼女は人目を引いていた。
それは2年に進級した直後、4月の半ば頃という、転入するには微妙な時期にこの学校に来たことも、一つの理由だと思うけれど。
「椿莉乃です」
たったその一言で、彼女はクラスの全員を惹きつけた。
男子はまるで今までに見たことのない珍しいものを見るように、声も出さず席に向かう彼女を目で追っていた。
女子は憧れの眼差し(で彼女を見ていたと僕は思う)。
担任の「出席とるぞー」の声がして全員がはっと目を覚ましたように、慌てて正面に視線を戻した。