放課後センチメンタル


「そんなことないよ。だってここは誰の場所でもないんだし」



そう言いながら彼女は耳に手をやった。

それに握られていたのはイヤホン。


じゃあ、彼女は音楽を聴きながら泣いていた……?

――でも、そんなことは聞けない。



「……よく屋上の存在に気づいたね。立ち入り禁止だし、生徒はめったに入らない場所なのに」

「ここを見つけたのは偶然。鍵がかかってないのに立ち入り禁止だなんて、変な話よね」

「どうやって外に出たの?」

「たてつけの悪いドアを開ける方法なんて、だいたい決まってるから」



ふふ、と彼女がいたずらをした子どもみたいに笑う。
さっきまで泣いていた雰囲気は全く見えなかった。

いや、見せないようにしているんだろうなと思った。


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