放課後センチメンタル


「……彼は言わなかったわけじゃなくて、椿さんと共有していたこの曲が、歌詞が……彼の気持ちの全てだったんだと思う」

「っ……」



力無く彼女はその場に座り込んでしまった。


ーー彼女は泣いている。

ただ、今までに見たことない、感情をあらわにしているような感じを受けた。


一人で静かに涙を流す彼女を初めて見た時は、何も知らなかったから、その姿さえも綺麗だと思ってしまったけれど。

今僕の目の前にいる彼女は、普通の、十七歳の少女で。


ーー出会って数ヵ月。

ただのクラスメイトが言うべきことでもないかもしれない。

だけど、彼が亡くなった事実だけを悲しんで、もっと誰かにすがりついて泣いても良かったんじゃないかな、って僕は思うんだ。

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