放課後センチメンタル
《6》曖昧メロディー
「……椿さんは」
「ん?」
「いつも何聴いてるの?」
そろそろ帰るねと言って、彼女は鞄から携帯とイヤホンを取り出した。
涙に触れない程度でどこまで踏み込んで良いのか分からなくて、今まで聞かなかったことだ。
ーーだって彼女が泣いている時、必ず耳にはイヤホンがあったから。
ただ、もう少し彼女と話していたかったという理由でもあるけれど。
彼女はドアに向けた身体を再び僕の方に向けた。
「……『Ring』っていう曲。でも、右京君は知らないかも」
「うーん……誰が歌ってる?」
「実は知らないの。友だちに教えてもらったんだけど、20年以上前の曲らしくて」