放課後センチメンタル


「え……そんな、悪いから」

「送らせて」



引く気はなかった。

実際、夏とはいえ日も傾いている。
彼女のような人が一人で歩くなんて危な過ぎる。


屋上で過ごしている時も言えば良かった。

そうすれば毎日彼女と一緒に帰ることができたかもしれないのに、と今頃気づいた自分を少し恨んだ。


中々引かない僕に、いつまでも押し問答を続ける方が無駄だと思ったのか、彼女は若干諦めたようにじゃあお願いします、と言った。


家に行けるかも、とかそういう邪な気持ちじゃないのは確か。

あのまま見送るだけだったら、彼女とは一生会えなくなってしまうようなーーそんな気がして。


上手くは言えないけれど、そんなありえないことを考えてしまうほどの根拠のない不安を、感じてしまったんだ。


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