ソラナミダ
「じゃあ、また今度。」



「ん。今度はうちに来て。」



「それはマズイよ。」



「ただの隣人なんだろ。やましいことはない。」



「…けど…。」



「たまには自宅で飲みたいからさ。相手いないと寂しいじゃん。」



「……彼女…いるじゃん。」



「下戸だもん。相手になんねーよ。」



「木村さんとか。」



「駄目だね、部屋漁りしそう。」



「私もするかもよ。エロ本探しとか。」



「…わこは…しない。」


「何で。わからないじゃん。」



「しないね。人のプラバシーにつけ込む真似は絶対しない。」



「…私、随分信用されてるね。」



「もちろん。」



「私となら、間違いは起きない。そういうこと…?」



「すこし違うな。」



「……?」



「『起きない』んじゃなくて、『起こせない』。それってさ、ある意味一番ドキドキする。スリルっていうかさ。そう…思わない?」







ドキドキ……?





「…そう思ってしまったら…終わりな気がする。この関係を続けちゃいけないって。」



「…………真面目だな。」



「…普通だよ。」




「…だからこそ、安心できる。」




「…………。」




「…また電話とか…、メールするよ。そのくらいならいい?」



「…もちろん。返事忘れることがあるかもしれないけど。」



「…待つよ。」



「…え?」



「いくらでも、気長に待てる。」



「…………。」




「待つのは、得意だから。」




私は……



何も言えなくなる。




鼓動がトクトクと…


次第にその音をはやめていく中で…。





「…じゃあ、また!」




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