ソラナミダ







それから……







私は、隣りの部屋を妙に意識するようになった。




出勤する時、

帰ってくる時、


ベランダに出る時………。







すぐ隣に住む人が、まともな人でよかったという安堵感がそうさせたのか……



今までとは違う、毎日。





それでも……



滅多に会うことはなかった。





いつもいつも、顔を合わせるのは変な時間帯で……





隣りの部屋の明かりがともるのを、なんとなく視界の端っこでとらえて……



ベランダで佇む。







タイミングが合えば、ハルミくんがやってきて……




「こんばんは。」


…と、挨拶を交わす。





ゆっくりと流れゆく時間を……



ベランダ越しの、隣り同士でただ何する訳でもなく…過ごす。





「…前髪きった?」



私のちょっとした変化に…


彼は気づく。



タ〇リさんみたいな口調に、私は笑う。





「煙草、やめたの?」





一方の私も、負けじと彼の「何か」に気づいて模索する。




「やめてないよ、今は気分じゃないだけ。」




丁寧な受け答えは、彼なりの優しさなのか……




あたり障りのない会話は、



少しずつ…



少しずつ……




変わっていく。







彼も、私も、ひとり暮らし。




こうやって……



何気ない時間が、心地よくなっていた。










もちろん、私だけかもしれないけれど………。







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