ソラナミダ
なんとか深夜に仕事は終わり…



マンションに着いてすぐに、私は部屋へは行かず…


中庭へと向かった。



マンションの住居人憩いの場として造られたこの場所には、人ひとりと訪れることはない。


人間関係の希薄さと、現代人の忙しさがそうさせているのかもいれない。
けれど私にとっては、四季に合わせて彩られるこの狭い空間が、癒しの場となっていた。




ヒラヒラ…


ひらひら……



舞い落ちる、木々の葉。



そしてなにより……


ここから見上げる、狭い夜空が大好きだった。



まるで宝石箱の中のように、まばゆく煌めき続ける星達…。



木製のベンチに寝転がり、星空に手を伸ばす。



ひとりきりの夜を、幾度となく過ごしてきた。
だから…
寂しくなんかない。
つらくなんかない。


けれど、壮大な月夜の空に吸い込まれそうになるこの変な感覚は…

私の胸をギュッとしめつけていた。





「…風邪ひくよ。」


「……!ハルミくん?」


目の前に、ハルミくんの顔。


私は飛び起きて、もう一度ハルミくんの姿を確認した。


…なんで…?

なんでここに…。



「さっき…平瀬さんがここに入ってくの見えた。けど…なんとなく声、掛けづらくて。」


「びっくりしたよ、ホント。ここに来る人なんていないからさ。しかもこんな時間に!」


まだ心臓がドクドクと脈を打っている。


「そうなんだ。俺も知らなかった。でも…、すげー綺麗。」


「…でしょ?もったいないよね。おかげで自分の庭みたく過ごせちゃう。」


「…それ、いいね。贅沢。隣り…座っていい?」


「もちろん、どうぞどうぞ!」





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