ソラナミダ
「……告白…しないの?」
「したいですけど、一応社内恋愛は禁止なんですよね?」
「うん、まあ……。」
「だから、怖くて…言えないです。」
「…………。」
「平瀬さんは、社内恋愛…してましたよね?」
「…………!」
「…久住さんと。」
「………都築くんから…聞いたの?」
「いいえ、彼からは何も。っていうか…、すぐわかりましたよ?平瀬さんはともかく、久住さんは平瀬さんばかり気にしてましたし。」
「………。」
「暗黙の了解ってヤツです。平瀬さんだから…、久住さんだから…、みんな、黙って認めていたようなものです。」
「……そっか…。」
そう…だったんだ。
「憧れてました。あんな風に…なりたかったんです。」
「………。ありがとう。でも…誉められた恋愛なんかじゃない。それに…、それを、私は…壊してしまった。」
カウンターに視線を落として…、私はぽつりと呟く。
「……薄々とは…気づいていました。難しいですか、社内恋愛って。」
「……。どうだろうな……。でも、ちゃんと…お互いを尊重し合えて、ちゃんと好きでいられれば…続いていけるんじゃないかな…。…って、ダメになった私が言えたことではないけど……。」
「………。」
「私は…、仕事も恋愛も中途半端だった。みんなにも…見透かされた。なんの見本にも…ならない。……でも……、きっと、人によって恋愛は…それぞれなんじゃないかな。私は、確かに仕事ばっかりだった。認められたくて…がむしゃらだった。だからってそれが…恋愛に結び付く訳じゃない。私は…、加藤ちゃんが羨ましい。いつもにこにこして、周囲に気を遣って、一生懸命で……。なりたくても、そうは…なれない。」
「………。」
「……ビール、温くなるね?本当は…、苦手なんでしょう?」
「………!」
ジョッキは汗をかいて……
加藤ちゃんの手に握られたまま。
「…私に合わせてくれたんだよね。…ありがと。おやっさん、ピーチフィズひとつちょーだい。」
「………!」
「私にも、加藤ちゃんみたいな女の子らしさだったり、優しさだったり、素直さだったり……。そんなものがあったら、良かったのかもしれないなあ……。」