ソラナミダ
カウンターに、ことり、と……カクテルが置かれた。
「……平瀬さんは…、ヨリを戻さないんですか?」
「……。……うん。」
「久住さんには…未練があるように見えます。」
「……そうかな……。」
「………。他に…、好きな人が…いるんですか?」
「………。……うん。ごめんね、憧れだなんて言ってもらう資格もないのに……。」
「……いえ、やっぱり…憧れちゃいます。」
「え?」
「将来を約束されたような…、あんな素敵な男の人はいないと思います。女性なら…、そういう人を逃す手はないでしょう?なのに…、平瀬さんは、安心よりも…自分の気持ちに素直で。……潔いですね。」
「………ただの、馬鹿だよ?」
「それだけ…、その人を想ってるってことですよ。」
「…………。」
「………私も…、頑張ります。」
加藤ちゃんはグラスを持って、
「かんぱ~い!……ですっ。」
私のジョッキに、カツンと合わせる。
「……やっぱりスキです、平瀬さん。平瀬さんこそ…、こんな私に、いつも優しくしてくれるじゃないですか。カクテル…、大好きなんです。……ありがとうございます。」
彼女はこくこくとそれん呑み干して……
「……ソルティードック、お願いします!」
やや、乱暴に…グラスを置いた。
「……。仕事でも、恋愛でも…。平瀬さんに認めて貰えるような女を…目指します。」
彼女の真っ直ぐな言葉は。
すとん……、と、気持ちいいくらいに……
私の胸の奥で留まった。
私も、そんな加藤ちゃんに…認めてもらえるような生き方を……していきたい。
心から……、そう思った。