ソラナミダ
「……今日は…来てくれて、ありがとう。」
「…うん……。」
「嬉しかった。」
「……うん。」
「……ごめんね。」
「……え……?」
何で……謝るの?
「わこは、真っ直ぐすぎて…純粋で……。俺とは、違う。」
「…………?」
さっきも、確か……そんなことを……。
「……時々……、怖くなった。このまま、何食わぬ顔して…側にいることが。……今だって…、怖い。わこが、どんな顔をしているのか…、見るのが、怖いんだ。」
「………?どういう…こと?」
私だって……、怖い。
何かが……変わっていく。
そんな前兆は…
ずっとすぐそこにあった。
出会った時から、私の中の日常が…変わっていって。
今もまた…
違う岐路に立っている。
選択を…迫られる。
予感が……
核心へと、変わっていく。
「………わこが、俺をどこかで信じきれていないのは……、多分、それが正解だったから。俺は、わこに…嘘ついてたから。ずっと、ずっと……嘘ばかりだった。」
「………え?」
「幸せを…壊してやろうかと思ったんだ。」
「……なに…それ……?」
「………けど…、わこはただの苦労しらずで…幸せなばっかりの女では…なかった。傷つけてやろうだなんて思ってた自分が…情けなくもなった。近づくにつれて、見透かされてる気がして……、逃げたくなった。」
「……………。」
「俺はまだ…、コドモのまま。………降参するよ。」
「……晴海…くん?」
「俺は、好きじゃない。初めから、好きなんかじゃ……ない。」
「…………。」
「全部……、芝居だよ?」
「……………。」
タクシーが……、マンションの前に、停車する。
「………演技…?」
「名演技だったろ?少しくらいは…騙されたんじゃない?」
「……………。」
晴海くんは、真っ直ぐに前を向いたまま…
こっちを見ようとはしない。