ソラナミダ



それからまた……



晴海くんには会えない日々が続いた。



ベランダで君を待つのが虚しくて……


次第に遠退く距離。




元々、それが当たり前…。






お礼を言いたい気もしたが…、
顔を合わせる勇気も、きっかけもなかった。


家に帰ってきているのかも分からない。




いつ見上げても、彼の部屋は電気もついていなくて……


一緒に星空を見上げてもいたのも、夢だったのではないかと思い始めた。




かわりに…


私は、夜もテレビを見るようになった。


晴海くんが出演しているものは、眠たくなっても目を擦りながらでも全部見た。



テレビで見せる笑顔は……


本当のあの笑顔とは違う、クールな笑い。




そうだよ……、


俳優のイメージがあるんだろうな…。


私が彼に持つ印象とは違う、大人の男性の顔。



なんとなくだけど、いつかまた……

近くであの笑顔を見たいと思った。










彼の色んな顔を知る度に……



もっともっと知りたくなる。




完全にファンの心境。




メディアの世界と
現実の世界………




その狭間で存在する、私にとっては唯一無二の……






とても不思議な存在だった。








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