ソラナミダ
仕事をしていても…結局、クリスマスから離れることはできない。



仕方がない。



どの会社も企業もクリスマス商戦に入っているのだから…。






ピンポーン…




不意に、インターホンが鳴る。



「はあ~い!」



感傷に浸りたくない一心で、モニターを確認もせずすぐに鍵を外した。



「はい。」


ドアを少しだけ開いて、来客を確認する。








「こんばんは。」


「……こんばんは…。」


思わぬ客人に、次の言葉が出ない。



「…あ…、ドア閉めるから中に入って。」


私は玄関の外を警戒しながら見渡し…

ドアを閉めた。


「元気だった?」


そんな私の行動なんてたいして気にも留めず、サラリと晴海くんは言った。


「…元気だったよ。」


「「………。」」


一瞬の沈黙の後…彼は眉を垂らして笑った。


「ねえ。今日さ、あそこに行った?」


「…あそこ?」


「マンションの中庭。」


「…最近行ってない。」


「やっぱり?会わないからそうかなって思った。…俺さ…、あそこによく行くよ。っつっても夜中だけど…。」


「…そうだったんだ。てか、帰って来てたんだね。」


「うん。時間ある時は…。ここのマンション、気に入ってるからできるだけ帰るようにはしてる。なかなか来れないけどね。」


「忙しいもんね。…見てるよ、テレビ。『宇野晴海』くん。」




「……名前、覚えてくれたんだ。」


「うん。ハルミって名前だったんだね。すごい人だし知ってたはずなのに…、ごめんね?…気づかなくて。」


「いや、そんなの全然!むしろ普通にしてくれて嬉しかった。それと…、名前は芸名。ホントは逆なんだ。」


「…逆?」


「うん。本名は、【晴見 うの】。ちなみに【うの】は平仮名。」

「…【うの】…?かわいい名前。」


「…マジで?平瀬さんもかわいいじゃん。」


3回目…!
あ、でも名前かあ…。

「さすが俳優さんだよね。プライベートでも人に優しくできるなんてすごい。」


「………。」


「でも…、隣りが晴海くんで良かったよ。変なひとだったら嫌だし。」


「…平瀬さん今『へんなひと』と俺、天秤かけて比べたでしょ。」


「いやいや、そんなつもりはなかったけどね。ってか…ちょっと散らかってるけどあがってく?」


「…え…。」




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