ソラナミダ
ああ…、何だこれは。



必殺スマイルか?



そんな顔されたら、女子ならみんなくらりとするだろう。


そして私もその通りでありまして…


どぎまぎしながら苦し紛れに出た言葉が、



「ありがとう。」



…と、


色気ないひと言。



「いえいえ~。」


軽~くあしらう晴海くん。




ってか、


軽っ。



本気で誉めたわけじゃないんだな。


いやいや、そんなの承知の上ですが……。




まあ、気を取り直して…



「…あ、ねえ、コーヒーでいい?」




「うん、ありがとう。」




ニコッと笑うその口角がキュッと上がっていて……



何て楽しそうに笑うのだと、



私はこの人…


晴海くんが羨ましくてならなかった。







コーヒーをいれながら…、

次第にこの状況が不思議に思えてきた。


「なんか…おかしい。」


「ん?」


「…だってさ、この前まで気づかなかったとはいえ、人気俳優が目の前にいるって普通ないよね。私からしたら、晴海くんがたまたま俳優だったってだけなんだけど。」


「……平瀬さんといると、なんっか普通だよな。」


「あ、何ソレ。微妙な表現っ。」


「普通って大事。非現実な世界にいるようなもんだから。」


「………。」


「つまりは…安心ってこと。この〇〇ホームのCMコンセプトみたいに。」


「…げ。なぜそれを?」



「用紙の裏に書いてあったよ、〇〇ホームって。」


「やだなあ、気づいてたんだ。も~……私ひとりで空回ってたんじゃん。」


「…いいCMになりそうだけどね。」



「………。」



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